ホーム > 物質循環科学講座
温暖化やオゾン層破壊に代表されるように, 地球環境は,地球の表層で進行する様々な時間・空間スケールの物質の循環が決めています.特に,私たち人間を含めた生命が活動する地球の表層環境の維持と変遷には,炭素・酸素・窒素・水素といった軽元素やその化合物の物質循環が深く関わっています. 物質循環科学講座は, 我々が住む地球の包括的な理解と将来予測をめざし, 観測・実験・数値解析を通して, 大気・海洋・陸域間における物質循環の諸過程とその変動の多様性を明らかにし, 過去・現在・未来の地球環境の動向を探求しています.また, 物質循環の定量化を実現するために, 必要となる新手法を開発しています.
大気・海洋・湖沼・河川・森林・温泉などを研究フィールドとしていて、生命活動によって駆動される物質の循環速度を、軽元素安定同位体指標を使って定量化することで、環境の自己修復能力の評価や、地球と生命圏の相互作用の理解、地球の将来像の予測などにつなげています。
黄砂やPM2.5など、大気エアロゾル粒子を中心に、ガス状先駆物質や降水・降雪も含めて研究対象としています。エアロゾルの生成から大気中での変質、大気からの沈着に至るまでをカバーし、観測手法や装置の開発も行っています。エアロゾルの研究は、物質輸送や気候影響、環境影響、健康影響の研究につながっています。
地球環境や人間の生活環境の変化に大きく関わる環境物質の起源や、大気・海洋・陸域における循環速度の解明に挑戦しています。特に、人間活動に由来するこれらの物質の環境負荷量の定量化やその影響評価を行い、地球温暖化や大気質・水質変化といった環境問題の対策を講じていくことに貢献することを目標としています。
地球規模における大気汚染や気候変動の問題について、フィールド観測やモデルシミュレーション、衛星観測データの解析を通じて取り組んでいます。特に2023年度に打ち上げ予定のGOSAT-GW衛星による二酸化炭素、メタン、窒素酸化物の観測に取り組み、パリ協定などの政策に活かす研究も行います。研究指導は国立環境研究所で行います。
海洋表層の約60%を占める低緯度域は貧栄養にも関わらず、世界で最も生物多様性の高いサンゴ礁の海があります。気候変動と低緯度域の物質循環、私たち人間も含めた沿岸生態系の相互関係を理解し、将来の気候変動に対する適応策をサンゴ礁地域に住む人々と共に考えていくことを目指して研究をおこなっています。フィールドワークと、環境変動・生物の応答を読み取るためのサンゴ・二枚貝などの生物源炭酸塩の地球化学分析・構造観察を主な手法としています。
サンゴなどの生物源炭酸塩岩に記録される地球環境から推定される過去・現在・未来の像を高解像度で捉えたいと思い、研究しています。人新世における気候変動と社会変動の相互作用の理解には科学的アプローチのアップグレードも必要であると感じ、アーティストと共同したアートの制作もおこなっています。
現在の気候は、地球が本来持つ自然の変動に人為起源の要因が積み重なったものです。気候の将来予測を行うためには、地球本来の気候変動を知る必要があり、最適な方法の一つとして長期変動の理解があります。その目的のためサンゴ礁に生息する造礁サンゴの骨格年輪を用いた過去数千年の環境復元に取り組んでいます。
生命活動に関わる大気・海洋・陸域における環境物質の循環速度を軽元素安定同位体分析等によって定量化することで、物質循環の解明に挑戦しています。主に湖沼や河川、海洋において観測的手法を用いて溶存物質の変動を研究するほか、分析手法や観測手法の開発にも取り組んでいます。
海には、大気中の二酸化炭素量に匹敵するほどの炭素が「有機物」として存在しています。しかし、その化学的実体はほとんど分かっていません。海洋有機物の組成や分子レベルでの同定を行い、海洋有機物の大半を占める溶存有機物の生成・分解メカニズムを調べて、海洋有機物の動態を明らかにすることに取り組んでいます。