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卒業生の声

環境学研究科地球環境科学専攻大気水圏科学系(2001年度以降に入学)または理学研究科大気水圏科学専攻(2000年度までに入学)で学位(博士・修士)を取得された先輩からのメッセージです。

博士後期課程(博士課程)

海洋地球研究船「みらい」で海底堆積物を採取、処理しているところ。右が本人。

原田 尚美 (Naomi HARADA)
国立研究開発法人 海洋研究開発機構 地球環境観測研究開発センター

博士前期・後期過程を大気水圏科学研究所(理学研究科 大気水圏科学専攻)で学びました。
海洋の生物地球化学循環がテーマの研究室で、太平洋を中心に熱帯赤道域から亜寒帯域まで先輩や同輩たちが研究船に乗船し活躍していました。私はというと、既に研究室に貯蔵されていた海底堆積物を試料に博士前期の研究を進め、予てから研究航海に参加したいと思っていたものの、一度も経験することなく、既に内定を得ていた会社に就職するべく修了を待つだけとなっていました。
博士前期2年の11月、思いがけず「白鳳丸」の太平洋赤道航海に参加する機会を得て指導教官の半田暢彦先生と一緒に乗船しました。360度の視界に陸地はなく、鏡のように静かに広がる赤道の海。何もかもが初めて体験する観測に大興奮。十数万年と気が遠くなるほどの年月を記録した堆積物を自らの手で船上に回収した時、「これは原田さんではなく後輩の誰かが研究するんだよ」という半田先生の言葉に思わず「私がやります!」と応えていました。
下船後、就職を断り、博士後期過程に進学。現在に至っております。
大学院での研究生活でやり残したことはないですか?悔いのないよう是非挑戦してください。

松本 潔  (Kiyoshi MATSUMOTO)
国立大学法人 山梨大学 生命環境学部

かつて理学研究科に設置されていた大気水圏科学専攻。そこには、年月の経つことも忘れ研究に没頭する先輩達や、世界を飛び回って研究をリードする先生方が大勢いらっしゃいました。
博士前期課程の大学院生だった私は、その雰囲気に飲み込まれるように研究の魅力に引き込まれていきました。テーマ設定も観測・実験も自由にやらせて頂き、しかし結果について議論を始めると厳しい批判も受けました。その繰り返しの中で、自力で研究する力を育てて頂きました。
博士後期課程に進学した私は、小笠原諸島をフィールドとした大気観測を始めました。苦労して取った面白いデータ、飽きるほど泳いだ小笠原の海。多くの刺激的な経験をさせて下さった研究室の先生方には、とても感謝しております。その後ポスドクや教員として大学で研究を続けてきましたが、大学院時代に培ったフィールド観測のノウハウや地球を俯瞰するセンスは、今の私の大きな財産となっています。

今日の大気水圏科学系にも、魅力ある研究を進める素晴らしい先生方が大勢いらっしゃいます。きっと引き継がれているであろう自由な気風の中で、研究のセンスを磨くことができると思います。

広瀬 正史 (Masafumi HIROSE)
学校法人 名城大学 理工学部

私は1998年に理学研究科地球惑星理学専攻(大気水圏系)の博士前期課程に入学し,衛星観測データを扱う研究室で雨の研究を始めました.
当時の研究所は豊かな自然が色濃く残る丘陵地にあり,よく窓の外を眺めていました.先生は国内外を飛び回っており,研究室には留学生が多く,大気現象や地球観測という研究対象の性質もあいまって,世界の広がりを感じる環境でした.そこで過ごすうちに,観測プロジェクトに携わる研究者の好奇心の力強さに惹かれ,真摯に取り組んでいきたいことが見つかりました.大学院時代に興味のあることを追求し,対話を重ね,思索にふけって見出したことは,その後の価値観や考え方の軸になっています.魅力的なものとの出会いは,焦燥感などもつきまといますが,人を動かす原動力となるようです.

名古屋大学では自然の動態を先端的な技術を駆使して理解しようとする革新的な試みが行われており,入り込むほどに自然現象の奥深さや研究の躍動感を感じることができると思います.新鮮な刺激を求めてみてはいかがでしょうか.

出世 ゆかり (Yukari SHUSSE)
国立研究開発法人 防災科学技術研究所

私が気象学を志し名古屋大学大学院理学研究科(気象学研究室)に入学したのは、環境学研究科が発足する3年前のことでした。
在籍中は降水レーダー観測に毎年のように参加し、中国大陸の梅雨前線、北陸地方の雪雲、沖縄の台風など、様々な気象と向き合う貴重な経験をさせていただきました。自身の研究では中国大陸で著しく発達した積乱雲の構造と降水効率の解明に取り組み、修士論文と博士論文をまとめる際には、観測での苦労やデータを取得できた時の喜びが大きな支えとなりました。研究室には学生の興味や自由な発想を尊重する雰囲気があり、個性豊かな教員・先輩・同輩・後輩達と活発に議論し時には助け合いながら切磋琢磨する日々を過ごしました。このような大学院生生活で感じた研究の面白さが、卒業後に研究者としての道を選択した一番のきっかけです。

現在は気象災害の軽減を目指した研究に従事していますが、研究や仕事で新しい挑戦を続けている大学院生時代の仲間達の存在が今でも大きな励みになっています。

鋤柄 千穂 (Chiho SUKIGARA)
国立大学法人 東京海洋大学 船舶・海洋オペレーションセンター

私が名古屋大学大学院での研究生活で学んだ最も重要なことは、「知りたいという気持ちをあきらめない」ということです。
当時の(そして現在に至る)私の研究は海洋の物質循環で、船舶観測や海洋係留実験など、海を調べるための多くのことを学びました。ところが、得られたデータが示すものは複雑で、理解するために長い時間が必要でした。環境の研究は、時に楽しく、また時に答えが見つからずつらいものです。多くの先生方は、研究を通して私にあきらめず考え抜くことを教えてくださいました。

研究を続けることは、簡単なことではありません。しかし、知りたいという気持ちがあれば幾何かの選択肢は見つかるでしょう。実際、私は大学院を卒業してから、異なる研究分野や研究以外(観測船と研究者の間のコーディネート)の仕事をしながら海洋の物質循環の研究も続けています。環境を知るための、そして知りたいという気持ちを持ち続けるための多くのことを学ぶ場所として、とても良い大学院であると思います。

山田 奈海葉 (Namiha YAMADA) 
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域 

私は博士後期課程の第一期生です。研究室内でも活発に議論が交わされていましたが、新設研究科では、これまで交流のなかった分野の方とお話ができ、大変新鮮に感じました。
地球環境科学専攻は、色々な場所へフィールドワークに出かける研究室が多く、私の所属研究室も研究航海によく参加していました。研究航海では、長期にわたり、様々な研究機関の方と研究・生活を共にし、多くの議論をすることができました。在籍中は、海水中の溶存有機物の化学的性質を明らかにするという非常に学術的な研究を行っていましたが、現職では求められる内容が異なり、研究内容も大きく変わりました。その際、それまで経験のなかった分析手法などを使用する必要性に迫られたのですが、研究航海で出会った方々に非常にお世話になり、なんとか乗り越えることが出来ました。在籍中、視野を広げる機会を多く与えて頂いたことに大変感謝しています。貴重な経験ができる研究科だと思います。

松木 篤 (Atsushi MATSUKI)
国立大学法人 金沢大学 環日本海域環境研究センター 

私が博士後期課程に進学したのは、環境学研究科の発足間もない2002年でした。理学研究科での前期課程から継続して大気エアロゾルについて研究し、2004年に学位を取得しました。はるか上空を偏西風に乗って運ばれる黄砂を捉えるため、時に中国の砂漠地帯にも赴き、測器を気球や航空機で飛ばしたりと、刺激あふれる非凡な研究環境で学ばせてもらえたことが、後期課程への進学はもとより、その後の海外経験、そして今につながっているように思います。
学位を取得し、博士研究員として引き続き名古屋で過ごした後、2年ほどブレース・パスカル大学(フランス)の物理気象研究所(LaMP)に滞在する機会を得ました。かのパスカルの名を冠する大学の窓からは、パスカルが17世紀に水銀柱を使って気圧の存在を証明する実験を行ったピュイ・ド・ドームという山が見えました。その山頂には現在、LaMPのメンバーらによって大気環境の一大観測拠点が築かれており、欧州に脈々と息づく科学の歴史と伝統に感銘を受けました。ここで得た経験は、金沢大学に赴任の後、独り立ち間もない私が自身の研究を切り盛りする上で貴重な指針となりました。
私が名古屋大学を離れた後も、お陰様で大学院在籍当時からお世話になった先生方や同世代の仲間とは共同研究を通じた貴重なお付き合いが続いています。その間にも、環境学研究科には当該分野で活躍する気鋭の先生方が続々と加わるなど、傍から見てもますます名古屋大学がアツい!と感じております。在学中あるいはこれから環境学研究科で学ぶ若い人達には、ぜひこうした恵まれた環境の下で大いに知的刺激を受け、羽ばたいてもらいたいですね。

山下 洋平 (Yohei YAMASHITA)
国立大学法人 北海道大学 大学院地球環境科学研究院 

私は2000年に名古屋大学・大学院理学研究科・地球惑星理学専攻・博士課程前期課程に進学し、大気水圏科学研究所(当時)の田上研究室(田上教授・西田助手)で研究を開始しました。私が修士2年の時に、大学院環境学研究科が新設され、私は地球環境科学専攻・博士課程後期課程に進学しました。修士課程、博士課程と一貫して、海洋溶存有機物の化学形評価からその動態(生成・分解・維持)を解明する事を目的に研究を行いました。博士取得後は田上研究室で日本学術振興会特別研究員、環境学研究科研究員として研究を継続しました。その後、フロリダ国際大学でポスドク研究員を務め、2009年から北海道大学・大学院地球環境科学研究院(大学院環境科学院)で教育・研究を行っています。大学院生時代には、テーマ設定から実験まで比較的自由に研究を行える雰囲気でしたが、異なった視点を有する2人の教員から直接指導を仰いだ事はとても有意義でした。また、当時の田上研究室では、教員・先輩・後輩の間で昼夜を問わず活発に議論が行われておりました。米国で研究員を行った際には、田上研究室で行われていた議論は世界の中でも最先端である事を実感しました。現在は、生態系および生物地球化学的循環における非生物態有機物の役割を明らかにする事を主な目的とし、大学院生の指導および研究を行っています。学生の研究を指導する立場になりましたが、大学院生時代の経験は現在の教育・研究活動の基盤となっています。教員としてはまだまだ若手ですが、当時の田上研究室の雰囲気と同様に、学生との議論を重視し、学生の考えを生かせる様に心がけながら指導しています。

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博士前期課程(修士課程)

新村 周平 (Shuhei SHINMURA)
株式会社ウェザーニューズ

気象学・気候学に興味があり、将来的には気象業界での就職を考えていた私は、学部3年時から、大気水圏科学系のセミナーを受講し、卒業研究については、地球温暖化と梅雨に関する研究に取り組みました。その後は大学院に進学し、気象学・気候学の見識を深めながら、地球温暖化のシミュレーションに用いる気候モデルのマルチモデル比較について研究しました。大学院生活においては、気象学・気候学に関する見識を深めながら、学会や研究集会での参加・発表なども重ね、有意義な研究生活を送ることができました。
卒業後は、㈱ウェザーニューズに入社し、予報センター配属となりました。各予報業務を経験し、現在はナウキャストに関するコンテンツの開発にも取り組んでいます。サービスがSafety (安全性) を重要視しており、かつGlobalをターゲットにしているので、大きな責任感とともにやりがいを感じながら日々業務に励んでいます。地球環境について研究に励んだ学生時代の経験は十二分に活かせています。

名古屋大学では素晴らしい先生方の元、研究においても最適な環境が揃っています。ここでしか経験できないこともあります。皆さんの有意義な学生生活とその後の活躍、期待しています。

櫻井 万祐子 (Mayuko SAKURAI)
気象庁 名古屋地方気象台

大学生活では、非常に貴重な経験をさせて頂いたと感じています。
私は、学部4年生と修士課程の計3年間、熱帯の巻雲とエアロゾルについての研究を行いました。エアロゾルとは、大気中に浮遊する微粒子を言います。これらを観測するためにインドネシアのBiak島へ行ったり、熱帯大気に関する日米合同ワークショップに参加したりと、刺激的な経験をさせて頂きました。
観測では、データを取得できるかという緊張感や高揚感で一杯になりました。また、現象を目の当たりにする面白さを感じました。ワークショップでは、多くの研究者と話す機会がありました。これらの経験を通じ、疑問を持つことは、気づきを得るチャンスだと知りました。

名古屋大学大学院環境学研究科には様々な分野の先生方がおられ、学生の探求心に応えて下さいます。
私は今、気象業界の職に就き、予報作業の基となる観測業務を担当しています。先輩からは「同じ天気でも同じ地上気象ではない」と伺い、気づきを逃さぬよう心掛けています。

川上 七恵 (Nanae KAWAKAMI)
愛知県庁

大学院の研究室を選ぶ時、私が選んだ指導教官は、当時南極で観測しており、大学院に入学するまで会ったことがありませんでした。私はその先生に丁寧にご指導いただき、とてもよかったと感じています。研究室を選ぶ際、①今の自分が心からワクワクする研究か、②深く考えるトレー ニングができそうか、③最近の論文などの成果がどれくらい出ているか、④同じ分野の先生などに研究室の様子を聞いてみること、が大切だと思います。私の場合はサンプリング装置を開発することや、集めたデータから何を見出すかについて悩むことが、自分の頭でしっかりと考える トレーニングになりました。

卒業後は、愛知県庁で大気汚染物質を調査しました。大学院で学んだことが直結していたため、全国の自治体との共同研究等において、自信をもって発言することができました。今は、研究とは別の環境の部署に所属していますが、大学院で学んだ「現場をよく知り、自分の頭でよく考えること」を大切にしていきたいと思っています。

浦 幸帆 (Sachiho URA)
北陸電力株式会社

私は、入学時に研究対象となる試料がすでに研究室に蓄積されており、同級生よりも早く研究を始めることが出来たため、とても恵まれた立場にありました。
それでも在学中は、時間が全然足りませんでした。正直、修論の大枠が出来上がる頃に最も研究って楽しいと感じ、次にこれを調べたら絶対面白い結果が出る、と心残りがあるなかで卒業したので、これから入学する学生さんには同じ後悔をしてほしくないと思います。

就活中は、今まで遭遇した困難に対してどのように対処したか、とよく問われましたが、研究中の経験が最も面接官に関心を持って頂けたように感じました。
実験室にほぼ籠っていた私ですが、先生をはじめ先輩や実験手伝いの方、廊下で声をかけてくれた地球惑星科学系の同級生、先生の共同研究相手の方々など、努力を認めてくれる方が沢山おられます。一生に一度の大学院生活に地球環境科学を選択してくれる後輩が一人でも増えることを願っています。

廣瀬 雄揮 (Yuuki HIROSE)
パナソニック株式会社

名古屋大学では花粉の大気中沈降速度と物理特性の関係について研究を行いました。地球環境科学専攻の先生方は熱心に学生を指導してくれます。私の担当教官は学生の自主性を重んじつつ、研究計画の起草から修士論文が完成するまで適切なフィードバックと濃密な議論の場を提供して下さったので、日々学びがあって研究の面白さを知ることができました。研究成果は修士論文だけでなく学術論文として海外の論文誌に掲載され、大きな達成感も味わうことができました。

私は現在、総合電機メーカーのR&D部門で知的財産の仕事をしています。今の仕事は、在学時の専攻分野と畑違いです。しかし、特許庁に提出する技術内容を表現した書類は論理的整合性が求められるので、修士論文や投稿論文を書くときに苦労して学習した文章技術と相通ずる部分があります。地球環境科学専攻で勉強した日々が今の仕事に大きく活きていると感じています。