鍾乳石を使った研究

日本と東アジアの気候復元を目指した鍾乳石の研究。流体包有物に注目して進めています。

 

 鍾乳石の流体包有物分析によるアジア域の気候変動の解明

日本を含む東アジア地域の陸域の気候変動は、地球全体からみても多数の人口を支えるアジアモンスーン気候の変動という点で注目を集めています。海洋に比べると陸域の気候復元は進んでいませんでしたが、鍾乳石は近年の同位体分析技術の発展によって正確な年代測定が可能になり重要な研究対象になっています。しかし、気温や降水量を定量的に推定することは難しいという問題があります。そこで、鍾乳石に含まれる微量の水(流体包有物)に注目して研究を進めています。流体包有物の水素・酸素の同位体比高感度測定法を開発し、気温復元を目指した同位体解析を行っています。

年代測定は、国立台湾大学(台湾)と南洋理工大学(シンガポール)と共同研究で進めています。


◎日本語の解説のpdf ⇒(植村, 鍾乳石から気候変動を読み解く, 化学と教育, 2016)











 流体包有物の同位体比分析手法の開発

鍾乳石に含まれる流体包有物の水は非常に微量で市販の装置では分析はできません。そこで、鍾乳石を効率的に破砕し、内部の流体包有物の水分子を真空中で抽出し、水素・酸素の同位体比を高感度測定する手法を独自に開発しました。同じ目的の装置は海外のグループがいくつか開発していますが、我々の手法超高感度・高精度という特徴があります。このように必要に応じて分析手法の開発から取り組むことでユニークで重要なデータを得られます。

 

●論文 ⇒ (Uemura et al., Geochimica et Cosmochimica Acta, 2016)