化石燃料やバイオマスの燃焼によって発生する「ブラックカーボン」と呼ばれる黒いエアロゾルは、太陽放射を効率的に吸収し、大気や雪氷面を加熱します。これは、地球温暖化や氷河・雪氷の融解に寄与していると考えられています。しかし、このプロセスには大きな不確実性があり、エアロゾルが気候に与える影響を正確に理解するにあたって重要な研究課題の1つとなっています。私たちは、独自に開発してきた気候-エアロゾルモデルを用いて、ブラックカーボンの全球分布とその気候への影響をより正確に推定する研究を進めています。
具体的には、ブラックカーボン粒子の粒径や化学組成が大気中で徐々に変化し、それに伴い太陽光の吸収量が増加するプロセスや、ブラックカーボン粒子が雲粒を形成し、降水によって大気から除去されるプロセスなどを精緻化してきました。これにより、ブラックカーボンの全球分布や大気加熱効果の推定精度を大幅に向上させてきました。
私たちは、ブラックカーボンを含む光吸収性エアロゾルが大気や雪氷面を加熱し、放射収支や気候に与える影響を明らかにするための研究を継続的に進めています。