エアロゾル?

大気中に浮遊する、目に見えないほど小さな微粒子を「エアロゾル」と呼びます。化石燃料の燃焼、バイオマスの燃焼(例えば森林火災)、植生、火山、海洋、土壌など、多様な発生源から放出されるエアロゾルは、私たちの周囲に広く存在しています。

これらの微粒子は、地球の気候に多岐にわたる影響を及ぼします。まず、エアロゾルが主に太陽光を散乱したり吸収したりすることで、大気や地表を冷却または加熱します(エアロゾル-放射相互作用)。また、雲粒の核として機能し、雲の性質や降水プロセスなどを変化させます(エアロゾル-雲相互作用)。さらに、「ブラックカーボン」(すす)と呼ばれる黒いエアロゾルが雪氷面に沈着すると、氷河や雪氷の加熱と融解を促進します(エアロゾル-雪氷圏相互作用)。そして、エアロゾルに含まれる栄養塩が陸域や海洋に沈着すると、生態系(植物や植物プランクトン)に影響を与え、大気から陸域・海洋への二酸化炭素の吸収量なども変化させます(エアロゾル-生態系相互作用)。

エアロゾルはこれらのプロセスを通じて気候を変化させ、全体として地球を冷却させる効果を持ち、温室効果ガスによる温暖化の一部を抑制すると考えられています。しかしながら、これらのプロセスにはまだよく理解されていない部分も多く、過去から将来にかけての気候の変化を理解・予測する上で鍵を握る要素です。

エアロゾルは、アジアのような巨大な発生源の近傍で特に濃度が高く、深刻な大気汚染や健康被害も引き起こします。また、エアロゾルは空間的・時間的な変動が非常に大きいため、地球規模や大陸規模の大気循環や台風などの局地的な気象場にも影響を及ぼすと考えられています。

私たちは、エアロゾル・雲・降水などの大気中の微粒子の振る舞いを詳細かつ現実的に扱う独自の数値モデルを開発してきました。そして、それを用いた数値シミュレーションを通じて、地球温暖化を含む気候の変化・変動に関する研究や、都市域における大気汚染・大気質に関する研究などを行っています。